構造的空隙

構造的空隙(structural holes)とは、シカゴ大学ビジネススクールのロナルド・S・バートが『競争の社会的構造:構造的空隙の理論』で提示した社会ネットワーク理論の一概念です。

構造的空隙は、マーク・グラノヴェターの「弱い紐帯」ほど重要で有益をもたらすという「弱い紐帯の強さ」の概念を発展させたもので、バートは「構造的空隙の強さ」と表現しました。バートは、得られる情報の量と質とネットワークの維持コストという観点から、企業が競争優位を確立するためのネットワーキングのあるべき方針として、構造的空隙を埋める絆の重要性を提示しました。

バートによると、ネットワーキングによって有益な情報を効率的に得るためには「重複しないコンタクト」が重要だと言います。たとえば企業間のネットワークにおいて、自社から複数のクラスター(グループ)へリンクが伸びている場合、そのリンクは同一クラスターへは重複せず、出来る限り別々のクラスターに分散すべきだ、と言います。同一のグループへ複数のリンクを張った場合、得られる情報も重複してしまいます。それぞれのリンクを維持するコストは、リンク先が別々のクラスターのノードに分散していても同一クラスターへ重複していても基本的には変わりません。したがって、リンク維持コストに対する得られる情報利益は、リンク先が同一クラスターへ重複するほど低下してしまいます。逆にリンク先を分散させることで、同じコストで重複しない多様な情報を獲得することが出来ます。

構造的空隙

構造的空隙

カリフォルニア大学デイヴィス校のアンドリュー・ハーガドンは、イノベーションを実現するために企業が採るべき行動として構造的空隙を埋めるネットワーキングの重要性を指摘しています。