取引数単純化の原理

取引数単純化の原理

取引数単純化の原理」(取引数最小化の原理、取引数極小化の原理)とは、「不確実性プール原理」と並ぶ商業(商業者)の存在意義を説明する「卸売機能原理」のひとつです。

元来は、生産者と消費者との間に卸売業者や小売業者が入ることで、全体の取引数を減らすことが出来るという原理として提唱されました。この原理はしばしば卸売業の存在意義を説明する際に用いられますが、卸売業のみにあてはまるものではありません。小売業の存在意義のうちもっとも本質的ながら最も見落とされがちなのは、生産者が個々の消費者に直接アクセスすると膨大な取引数になってしまうために、小売店という特定の場に多数の生産者が生産物を集めることで効率的に生産物を提供することができることにあります。

現代においては卸売業や小売業のみでなく、ポータルサイトや転職エージェントはじめとするあらゆる仲介ビジネス、マッチング・ビジネスを成り立たせるフレームワークとして考えることができ、今日においては極めて重要性が高い概念です。すなわち、中間業者が仲介するのは、商品物流だけでなく、情報も仲介するという部分において、この原理の今日的な重要性が高まっています。

 

図1.直接流通

図1.直接流通

 

生産者が4社、消費者が5人の場合、直接流通の場合の総取引数は図1のように20となります。

 

図2.間接流通

図2.間接流通

図2のように中間業者が1社入って間接流通になると、総取引数は図2のように9となります。

 

この場合、

直接流通の総取引数:20>間接流通の取引数:9

となり、間接流通の取引数単純化の原理が働いたことがわかります。このような場合、間接流通になることで取引にかかるコストが削減されます。

図3.中間業者の多すぎる間接流通

図3.中間業者の多すぎる間接流通

 

しかし、中間業者が3社になると、総取引数は図3のように27となってしまい、

直接流通の総取引数:20<間接流通の総取引数:27

と、間接流通のほうが総取引数が多くなってしまいます。

 

したがって、間接流通による効率性のアドバンテージを得るには、

直接流通の総取引数(D)>間接流通の総取引数(I)

とならなければなりません。

 

直接流通の総取引数(D)<間接流通の総取引数(I)

となってしまった場合には、中間業者は理論上、

直接流通の総取引数(D)>間接流通の総取引数(I)

となるまで削減されることになります。

 

つまり、中間業者の存立可能数は、間接流通による総取引数が直接流通の取引数未満になる状態を実現できる数となります。

 

ただし、すべての消費者がすべての中間業者と取引することは現実的にはありません。また、かならずしもすべての中間業者がすべての生産者と取引することもかぎりません。その場合には、中間業者が3社入った場合でも上の図3よりも取引数が少なくなります。ただし、それは直接流通にも同じことが言え、すべての消費者がすべての生産者と取引するわけではありません。