PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)

PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)

PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント/製品ポートフォリオ・マネジメント/事業ポートフォリオ・マネジメント)は、ボストン・コンサルティング・グループが開発した事業投資意思決定のためのフレームワークです。

複数の製品・事業を展開する企業がそれぞれの製品・事業を全社的にマネジメントし、企業全体としてキャッシュの創出とそのキャッシュの投資を適切に管理すると共に、事業間の市場成長率&シェアの違いの観点から各事業の新陳代謝を総合的に全社視点で管理しようとするものです。

フレームワークとしては、縦軸を「市場成長率」、横軸を「相対的マーケットシェア」とし、縦横2×2の4象限(セル)のマトリクスを構成し、その中に各事業の規模を円の大きさで表してをプロットします。したがって、「市場成長率」「相対的マーケットシェア」「事業規模」の3次元を表現するいわゆるバブルチャートとなります。

 

<軸の作成>

縦軸の「市場成長率」は、一般的に用いられている年間の市場規模の成長率を用います。
横軸の「相対的マーケットシェア」は、トップシェア企業に対する自社のシェアの割合を用います。

  • 例えば、トップシェア企業が10%、自社が8%の場合、「相対的マーケットシェア」は0.8となります。

自社がトップシェアの場合は、シェア2位の企業に対する自社のシェアを用います。

  • 例えば、当該事業の自社のシェアが10%で業界1位、2位企業が8%の場合、「相対的マーケットシェア」は1.25となります。

 

<軸とキャッシュの関係性>

  • 縦軸の「市場成長率」の高-低は、キャッシュ・アウト(資金流出)の大-小をもたらします。
  • 横軸の「相対的マーケットシェアの高-低は、キャッシュ・インの大-小をもたらします。
プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント

プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント

<セルの特徴>

 

【金のなる木】

成長率は低く、相対シェアは高い事業です。

市場は成熟化していて、これから高成長が見込めない状況下で、シェアは高い事業です。高成長が見込めない以上、新規に多額の投資はせずに現在あずかれる多大な利益を享受する方針を採ります。4つのセルの中で1番の稼ぎ頭です。ここで得たキャッシュを他のセルの事業へ投資し、新規事業の成長を図ります。

 

【花形】

成長率、相対シェア、共に高い事業です。

市場は成長途上であるため最大市場規模には達していませんが、相対的マーケットシェアが高いため、「金のなる木」に次いで大きなキャッシュ流入を得ることができます。しかし、今後継続的に市場を拡大するために資金流出も大きくなるため、トータルでのキャッシュフローは「金のなる木」ほどは望めません。継続的に投資を行い、「金のなる木」に育てていきます。

 

【問題児】

市場成長率は高いものの、相対シェアが低い事業です。

キャッシュ・インが少ないのにキャッシュ・アウトが大きいという問題を抱えています。早めに手を打って積極的投資によって花形に育て上げる戦略を採るか、撤退を検討します。積極的な施策を講じるのが遅れると、いつまでも資金流出が続いてしまい、さらには負け犬になってしまいます。

 

【負け犬】

市場成長率、相対シェアともに低い事業です。変動費以上の一定の利益を稼げる状況であれば新規投資をせずに収穫戦略を採用するか、それでなければ撤退や売却をします。

 

<PPMの留意点>

PPMは有用なフレームワークですが、以下のような限界も指摘されており、運用する際には留意することが必要となります。

  • 成熟市場においても画期的なイノベーションによってさらに市場が成長することがある。
  • 撤退決定事業の従業員のモラールの低下する恐れがあり、またそれによって衰退が早期化されてしまう可能性がある。
  • 事業間シナジー効果が考慮されていない。
  • シェアを過度に追求せずに高利益を追求する差別化戦略の優位性が考慮されていない。
  • キャッシュの内部調達のみで事業投資の意思決定を行おうとしており、外部資金調達の存在が考慮されていない。

<理論的背景>

PPMの理論的背景には、経験曲線効果とプロダクト・ライフサイクル理論の考え方があります。